キャリア
2026年02月20日
仕事の原動力は作業所や人の役に立てること 体が動く限り環境分野で社会に貢献し続けたい
目次
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鉱山技師志望だった学生時代
私は山形大学の地球環境学科で学び、学生時代は鉱山技師を目指していました。大手鉱山会社から内定を得ましたが、提示された勤務地がアフリカのマリ共和国やザイール共和国(現コンゴ民主共和国)など厳しい環境だったために辞退し、知人の縁を通じて、大手ゼネコンの子会社で水処理施設関連事業を主業務とする会社に就職しました。
その会社では排水処理や汚染土壌対策、プラント施工などに携わり、仕事自体には面白さを感じていました。この時期の経験が、後年の環境管理業務の土台にもなっています。しかし次第に、役員や上層部が親会社出身者で占められている構造に違和感を抱くようになりました。技術的には自分のほうが詳しいと感じる場面でも、立場上従わざるを得ない状況に葛藤を覚え、元請けであるゼネコンで自らの力を試したいという意欲が高まっていったのです。
それで、当時勤めていた会社の近くにあった大手ゼネコンのキャリア採用に応募し、合格しました。現在の勤務先です。正直、建築主体のゼネコンへの転職は想定外ではありましたが、父が左官業を営んでいたこともあり、もともと建物や歴史的建造物に対する興味と敬意は強く持っていたので、環境分野の専門性を生かしつつ新たな領域に挑戦する決断をしました。
現場と本社、法令と実務をつなぐ仕事に従事
今の勤務先に転職し、最初は現場代理人を務めることになりました。現場代理人は、いわば「ガキ大将」のように我が強い人が適任であり、自分には向いていないと思っていましたが、実際に業務に就いて10年ほど経った頃、実は私のような温和なタイプでも現場をまとめられる適性があることに気付きました。時間をかけて自分なりのやり方が機能していることが分かり、納得感を得た次第です。
現在、私が所属する安全環境部・環境グループは、社内において必ずしも目立つ存在ではありませんが、現場運営を下支えする重要な部署です。以前は産業廃棄物処理の契約管理が中心業務であり、比較的事務的な色合いの強い部署として位置づけられていました。しかし時代の変化とともに、廃棄物処理、有害物質対応、汚染土壌処理など高度な専門性を要する業務が増え、対応の難易度は上がってきています。その中で私自身は、単なる事務処理では対応できない領域を担い、現場と本社、法令と実務をつなぐ役割を果たしています。
環境分野では法令遵守が最優先事項となりますが、環境関連の法律は複雑で難解です。私は部下に対し、単に「法律で禁止されているからできない」と結論づけるのではなく、法律の趣旨や運用実態を理解したうえで、現場が実行可能な選択肢を提示することこそが専門家の役割だと伝えています。そうした姿勢が、現場から信頼を得ることにつながるのです。
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仕事上の信条は「安易に逃げないこと」
安全管理が「事故ゼロで当たり前」と評価されにくいのに対し、環境分野は数値目標や改善成果が明確に見えやすいという特徴があります。リサイクル率の向上やCO₂削減といった努力目標に向かって前向きに取り組める点に、大きなやりがいを感じています。また、専門性が高いため作業所からの依存度も高く、「頼られる存在」であることが仕事のモチベーションになっています。
グループリーダーとしての役割は、専門業務だけでなくマネジメントにも及び、上司の方針変更と部下の個人的な不満の板挟みになることもあります。3年ごとに替わる部長の方針に合わせつつ、部下の要望を聞く立場は大変ですが、「誰かがやらなければならない役割」という使命感を持って取り組んでいます。
私は仕事において「安易に逃げない」ことを信条としています。逃げても結局は自分に返ってくるからです。困難な業務や調整役を避けずに引き受けてきた経験から、最終的には向き合ったほうが自分の糧になると実感しています。そのため中間管理職としての負担も、損得ではなく責任として受け止めているんです。
私は、昇進や部署異動を目的としたキャリア形成には特に関心を抱いていません。仕事の原動力となっているのは「作業所や人の役に立てていること」であり、その積み重ねの結果として現在の立場があると考えています。グループリーダーという肩書きも、目指したものではなくあくまで結果であり、「仕事の本質は立場ではなく貢献度にある」という一貫した価値観を持っています。
父親と大学時代の恩師から受けた影響
私が強い影響を受けた人物は、左官職人だった父と、大学時代の恩師です。2人とも「決して怒鳴らず、優しく教える」タイプの人徳者でした。父からは「現場には1時間前に入り、最後の1時間は仕事を振り返れ」という職人としての規律を教わり、それが今も私の仕事観のベースになっています。恩師からは、知識だけでなく人格面でも大きな影響を受けました。怒らず、学生を信じて任せる恩師の指導姿勢に接したことで、私自身も後輩や部下に対して高圧的にならないマネジメントを心がけるようになったのです。
また、司馬遼太郎の『坂の上の雲』をはじめとする歴史小説からも、価値観を形成するうえで影響を受けました。『坂の上の雲』で描かれる明治期の日本人が持っていた熱量や使命感、貧しくとも国家や社会のために尽くす姿勢には強い共感を覚えますし、現代社会において失われつつある「熱意」や「覚悟」を考えるうえで、歴史小説は重要な示唆を与えてくれます。
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苦労を共にした仕事仲間は最大の財産
建設の仕事は大規模で多くの人が関わるため、仲間とのつながりが非常に重要です。特殊な環境分野で苦労を共にした仲間や、相談に来てくれる後輩たちは私にとって最大の財産です。他方、深刻な労働力不足に直面している建設業界において、AIやロボットによるオートメーション化は不可避だと考えています。特に専門知識の蓄積や問い合わせ対応などは、AIによる支援が有効な分野であり、人が担うべき部分とAIに任せる部分を切り分けることが、これからの業界存続の鍵になると認識しています。
私自身の今後の目標は、定年までの約10年間で、環境分野での技術士の資格を取得することです。後継者の育成を進めつつ、自身の研究テーマを追求し、環境分野の専門家として研さんを積む意欲は衰えていません。定年後も体が動く限り、環境の分野で社会に貢献し続けたいと考えています。
※2025年12月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
この記事でキャリアした方のプロフィール
- 氏名:小松 保(こまつ たもつ)氏
- 所属企業名:大手ゼネコン
- 従業員数:5000人以上
- 職種:グループリーダー(副部長)/安全環境部 環境グループ
- 年代:50代
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